屋上・壁面緑化技術コンクール 受賞一覧(受賞回別)

第19回 屋上・壁面緑化技術コンクール 受賞一覧

「屋上・壁面・特殊緑化技術コンクール」今回の受賞団体は、以下の通りです。

第19回 国土交通大臣賞:屋上緑化部門 (東京都新宿区)
株式会社 山下設計
清水建設株式会社
設計組織プレイスメディア
イビデングリーンテック株式会社
学校法人早稲田大学キャンパス企画部
早稲田大学37号館 早稲田アリーナ

 本作品は、最大収容人数6,000人の多機能型スポーツアリーナを中心にラーニングコモンズ等を内包する大学施設の緑化である。設計では、地域との連携強化、知的生産性向上、省エネルギーの推進等、現代の大学が抱える多くの課題を一手に解決する、持続性に優れた建築の在り方を模索した。
 具体的には、建物の大半を地下に埋設し、その地表に新たなパブリックスペース「戸山の丘(屋上ひろば)」を整備することで、人・地域・環境・歴史を繋ぎ、キャンパス環境だけでなく、地域環境や地球環境の向上にも寄与する建築を実現している。周辺に生息する植物を主体とした植栽計画は、地域の生態系強化やバイオフィリックデザインによるキャンパス全体の知的生産性向上等にも寄与している。
 十分な植栽基盤や土厚の確保は、構造体に大きな荷重的負担を与えるにもかかわらず、様々な緑化技術や環境技術を用いて、生物多様性に富んだ質の高い緑化や、建築物のエネルギー量削減(ZEB Ready認証取得)を実現している点が高く評価された。


第19回 環境大臣賞:屋上緑化部門 (神奈川県横浜市)
東神開発株式会社
東急不動産株式会社
中村拓志&NAP建築設計事務所
株式会社東急設計コンサルタント
西松建設株式会社
株式会社石勝エクステリア
横浜北幸ビル

 本作品は、低層階にイベントホール、カルチャースクール、4階から上層階に210戸の分譲マンションを配した複合施設の緑化である。低層階は地上部の街路樹と連動するような樹木が林立するテラスを配し、1~4階までのステップガーデンが分譲マンションの基盤となり、日常と緑の融合による豊かな生活環境を印象づけている。
 段々状のステップガーデンは横浜「山手」の緑豊かな急斜面の土手を再現したもので、昼には南からの海風が吹き、夜には山おろしが吹く山手の自然現象を表現している。2~4階のステップガーデンをつなぐ蛇行した空中回廊は、「山手」の急斜面道のように海を望むことができる地域特有の“しぐさ”を生み出している。
 街並みと屋上緑化(ガーデン)を見下ろし、来訪者を呼び込むウォーカブルガーデンという空中回廊、地上の水と緑の連続性を意識したデザインが高く評価された。


第19回 日本経済新聞社賞:壁面・特殊緑化部門 (東京都中央区)
安田不動産株式会社
株式会社 松田平田設計
UDS株式会社
the range design INC.
AOYAMA NOMURA DESIGN + 株式会社乃村工藝社
SOLSO
株式会社イケガミ
HAMACHO HOTEL&APARTMENTS

 本作品は、ホテルと賃貸住宅の複合施設の緑化である。日本橋浜町エリア全域に安田不動産が展開する開発【『緑』と『手しごと』の見える街】のシンボルとして計画した建築であり、宿泊・居住機能に加え、レストラン・ギャラリー・ショップなど、国内外からのゲストによる新しい文化・コミュニティの創出を担い、地域の交流拠点となる施設である。
 最大の特徴は最大5mの高木を建物外壁に立体的に配置したバルコニー緑化である。豊かな緑と柔らかな木調化粧型枠コンクリートの外壁を組みあわせ、個性的で存在感がありながら柔らかい表情をもつ外観とした。バルコニーと地上部の緑化計画は多様な樹種・高さの植栽を組み合わせ、自然なままの植生の印象を与える植栽デザインとした。バルコニー緑化には、上階のホテル客室からの眺望に地上部のような豊かな緑を加え、驚きと同時に安らぎのある演出に寄与している。
 ニュー・ノーマル時代を迎え、積極的に多様な樹種・高さの植栽を導入し、宿泊客の心をゆったりさせる演出に挑戦した点が高く評価された。


第19回 都市緑化機構会長賞:屋上緑化部門 (東京都新宿区)
学校法人東京医科大学
株式会社大林組
東京医科大学病院

 本作品は、新宿副都心に建つ大学附属病院(904床)の低層部屋上に整備された屋上庭園である。目線の高さに配置された“みどりの箱(壁面緑化)”や手で触られる“みどりの立上”及び一年中楽しめる“彩りの丘(リズミカルガーデン)”により、自然を感じることができる庭園として、患者様や職員をはじめとする利用者に優しさや癒しを与える空間をつくり出している。
 超高層建築群にある庭園としてビル風や日当たりを考慮しながら、“多様なみどり”を計画しつつ、植物のアレルギーにも配慮して樹種を選定している。
 荷重制限と屋上庭園の開放感、利用者の安全性を両立させて、緑量を確保しようとする点が高く評価された。


第19回 都市緑化機構会長賞:壁面・特殊緑化部門 (千葉県市川市)
ESR株式会社
渡辺美緒デザイン事務所合同会社
ESR市川ディストリビューションセンター

 本作品は、首都高速湾岸線と外環自動車道の交わる市川市の高谷ジャンクションからほど近い場所に建設された国内最大級のマルチテナント型物流施設の壁面緑化である。
 「HUMAN CENTRIC DESIGN(人を中心にしたデザイン)」をコンセプトとし、地域的背景を元に100年前の海岸線を抽象的に表現した植栽デザインを提案した。また、耐潮性があり、デザイン的に表情の付けやすい植栽を選択し、季節や時の経過とともに姿を変える植物の移ろいと海岸線の移ろいを表現している。
 日本の都市景観、道路景観に影響を与える物流施設の緑化の取り組みを促進する観点が高く評価された。


第19回 奨励賞:特定テーマ部門 (静岡県裾野市)
裾野市環境緑花事業協同組合 裾野市立鈴木図書館 風の広場 屋上花壇

 本作品は、長年市民に愛されてきた教育施設の屋上部分(風の広場)の緑化である。地方創生事業の一環として、裾野市の支援を受けて新開発された薄層屋上緑化技術FSGシステムを用いて整備されている。
 既存の建物の過重的負担を軽減するため、独自開発した土壌を用い、土厚10cm以内でも、高さ3mまでの高木、中木の植栽を可能としている。また、植栽の転倒防止のため、植栽用の樹木を独自生産し、風洞実験では風速30m/hまで耐えうることも実証しており、2017年9月以降での大型台風による転倒被害も0件であった。
 独自の発根技術の開発、風洞実験による安全性の確立、コスト削減や工期の短縮など、制限のある既存建物の屋上にて緑化を実現する技術開発を試みた点が評価された。